

短めに
よしルビ
ある日天使さんは言いました。
「ねえ、貴女はどうしてそんなに優しいの?」
堕天使さんは言いました。
「私は堕天使、優しいだなんてそんなこと…あるわけないわ」
本当にそうかなぁ、天使さんはそう思って堕天使さんにこう言います。
「でも私は貴女といられて幸せだよ?」
それを聞いた堕天使さんは
「私は全然そんなことないけどね」
そう言って天使さんから顔を背けました。
それでも堕天使さんは天使さんの隣にずっといて
天使さんはそんな堕天使さんのことが大好きでした。
ルビィ「──おしまい」
善子「……え? 何それ、なんの話?」
ルビィ「今の善子ちゃんとルビィのお話」
善子「へえ、即興なのね」
ルビィ「うん、ついさっき考えたんだぁ」
善子「すぐ思いついたにしてはまあ、それなりじゃない?」
ルビィ「えへへっ、ありがとう」
善子「なんか結構ふわふわしてて、それがルビィっぽいというか」
善子「そんな感じ」
ルビィ「ふーん、そっか」
善子「……で?」
ルビィ「え?」
善子「いやだから、なんで急にそんな話をしたのってことなんだけど」
ルビィ「うーん、多分言いたくなっただけかもしれない」
善子「あっそう……ねえルビィ、その話を聞いたうえで言うのもなんだけどさ」
ルビィ「うん」
善子「そろそろ帰りたいんだけど私」
ルビィ「えっ、帰っちゃうの?」
善子「ええ」
ルビィ「善子ちゃん帰っちゃうの?」
善子「まあね」
ルビィ「…堕天使さんは一緒にいてくれたのに」
善子「あんたの創作の中の話でしょそれ」
ルビィ「善子ちゃんは堕天使なのに一緒にいてくれないんだ」
善子「そんなこと言われたってね」
善子「というか何? じゃああんた…自分のこと天使だと思ってるわけ? それはちょっとどうかと思うわよ」
ルビィ「善子ちゃんにだけは言われたくないけど」
善子「うっ……うるさいわね…」
ルビィ「それに善子ちゃんが言ってくれたんだよ、ルビィは天使よねって」
善子「いつよそれ」
ルビィ「結構前に」
善子「身に覚えがないんだけど」
ルビィ「それからかなぁ、ルビィが善子ちゃんのこと気になり始めたの」
善子「ねえ衝撃的な発言を畳みかけるのはやめてくれない?」
ルビィ「でも本当のことだもん」
善子「……仮にそうだったとしても、もうちょっとこう…控えて欲しかったんだけどね」
ルビィ「どうして?」
善子「そんなにポンポンとストレートに言われたら流石に捌ききれないわ」
ルビィ「えーっと…照れてるの?」
善子「……違うけど」
ルビィ「そっか、恥ずかしかったんだ」
善子「だから違うし」
ルビィ「善子ちゃん、ルビィはそういうところも好きだよ?」
善子「私はあんたのそういうところが苦手」
ルビィ「うん知ってるよ、でもやめない」
善子「…天使から出てくる発言とはとても思えないわね」
ルビィ「えへへっ、そうだね」
善子「はぁーっ…全く、なにが可笑しいんだか……調子狂うわねもう」
ルビィ「じゃあ調子が戻るまで一緒にいる?」
善子「いや、そもそもの元凶はあんたでしょ」
ルビィ「そうだね」
善子「だから帰るわ」
ルビィ「えっ、待って行かないで」
善子「待たない、行くから」
ルビィ「待って」ダキッ
善子「ちょっと」
ルビィ「……ん」ギュッ
善子「……離してよ、動けないでしょ」
ルビィ「ねえ、まだ一緒にいたい」
善子「……」
ルビィ「……駄目?」
善子「……勝手にすればいいでしょ、もう」
ルビィ「いいの?」
善子「いいって言わないと絶対離してくれないじゃない」
ルビィ「そうだね」パッ
善子「少しは否定しなさいよ」
ルビィ「ルビィは正直者だから」
善子「正直者にしては馬鹿を見なさすぎよね」
ルビィ「そうかなぁ?」
善子「ええ、そういう意味では確かに穢れのない天使って感じがするわルビィは」
ルビィ「善子ちゃんはそういう捻くれたところが堕天使っぽいよね」
善子「お陰様でね、そう言わないとやってられないのよ」
ルビィ「そっか…ごめんね、我がままばっかり言って」
善子「ええ、面倒くさいったらないわね」
ルビィ「……」
善子「……ま、その面倒くささがいいんだけど」
ルビィ「……え?」
善子「…手間のかかる子ほど…って言うでしょ? だからね、ルビィはそれでいいのよ」
ルビィ「……やっぱり善子ちゃんは優しいね」
善子「……」
ルビィ「ねえ、善子ちゃんはどうしてそんなに優しいの?」
善子「…別に私は優しくなんてないわよ、ただ」
ルビィ「ただ?」
善子「ルビィが相手だから、自然とそうなっちゃうのかもね」
ルビィ「……そっか」
善子「なに笑ってるのよ」
ルビィ「ううん、善子ちゃんと一緒にいられて幸せだなぁって」
善子「……私は全然そんなことないけどね」
ルビィ「そうなの?」
善子「そうなの」
ルビィ「じゃあ、どこかに行く?」
善子「なんでそうなるのよ」
ルビィ「もしかしたら幸せなこと、あるかもしれないから」
善子「……」
善子「……そうね、なら何か食べにでも行きましょうか」
ルビィ「クレープ?」
善子「パフェがいいわね」
ルビィ「ならそうしよっか」
善子「ええ、ほら行くわよルビィ」スッ
ルビィ「はい」ギュッ
善子「…やっぱりこの距離が一番落ち着くわね」
ルビィ「そうなんだ」
善子「ルビィはくっ付きすぎだもの、私はこれくらいで丁度いいの」
ルビィ「ルビィは別に善子ちゃんが一緒なら何だっていいんだけどね」
善子「はいはい、そうでしょうね」
ルビィ「うん、ルビィはそんな堕天使さんのことが大好きなんです」
善子「……あっそ」
善子「……はぁーっ…なんか不安になってきたわ、これ以上糖分入るかしら」
ルビィ「デザートは別腹だから大丈夫だよ、きっと」
善子「だといいわね」
─スタスタ
善子「ねえルビィ」
ルビィ「んー?」
善子「あんたといるといつも思うのよ、帰りたいって」
ルビィ「うん」
善子「だからさ」
善子「たまにはルビィのほうから遊びに来なさいよね」
ルビィ「……」
善子「それならずっと、一緒にいられるでしょ?」
ルビィ「…うん分かった、今度からそうするね」
善子「ええ」
ルビィ「だけど…ねえ善子ちゃん」
善子「なに?」
ルビィ「もしかして、それが言いたくて今までずっと帰りたいって言ってたの?」
善子「…………そんなわけないでしょ」
ルビィ「やっぱりそうなんだ」
善子「だから違うって」
ルビィ「クスッ、嬉しいなあ……善子ちゃん大好き」ギュッ
善子「いや、だから……ああもう…」
善子「私はあんたのそういうところが嫌いよ…」ギュ
ルビィ「嫌いなの?」
善子「ええ、嫌い」
ルビィ「ねえ、いつになったら好きになってくれる?」
善子「さあね……でもまあ、強いて言うなら」
善子「いつでも、かしらね」
ルビィ「ふーん……そっか」ニコッ
善子「…ええ、そうなのよ」フフッ
流石よしルビの家
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