ことりぷらす

梨子「隠していたこと、ですか？」

ダイヤ「えぇ、聞いてくれますか？」

梨子「まあ、聞かない理由はないですし……」

ダイヤ「ありがとうございます、梨子さん、いえ――」

ダイヤ「ガーネット」

梨子「……はい？」

梨子「えっと、ガーネットって？」

ダイヤ「あなたの本当の名前ですわ」

梨子「いやいや、私は桜内梨子ですけど」

ダイヤ「いえ、あなたは黒澤ガーネット――」

ダイヤ「黒澤4姉妹の次女ですわ」

梨子「いや、そんなこと急に言われても……って4姉妹？」

梨子「ま、待ってください、4姉妹って、ダイヤさんとルビィちゃんと、認めたくないけど私と――」

梨子「あと1人いるんですか……？」

ダイヤ「本人には伝えていませんけど、もう1人いますわ」

ダイヤ「津島善子、それがあの子の――黒澤サファイアの今の名前ですわ」

梨子「よっちゃん！？」

ダイヤ「えぇ、ダイヤ、ガーネット、サファイア、ルビィ。これが黒澤家4姉妹ですわ」

梨子「4姉妹……」

ダイヤ「……この4人の名前をきいてピンときませんか？」

梨子「ピンとくるも何も、宝石ってことしか……」

ダイヤ「お父様は誕生石を名前につけましたの」

ダイヤ「とはいっても本人の、ではなく姉の、ですけど」

ダイヤ「わたくしは長女ですのでお父様の誕生石、ダイヤモンドを」

ダイヤ「次女のあなたはわたくしの誕生石、ガーネットを」

ダイヤ「サファイアはあなたの誕生石、そしてルビィは善子さんの誕生石」

梨子「……あ」

ダイヤ「わたくしと善子さんが、そしてあなたとルビィが似ていると思ったことはありませんか？」

梨子「……」

ダイヤ「わたくしと、善子さんと、あなたが共通して吊り目であることに、疑問を抱きませんでしたか？」

梨子「そ、そんな――」

梨子「あ！ でも、誕生日がおかしいです！」

梨子「私とダイヤさんもそうですし、ルビィちゃんとよっちゃんも――」ﾊｯ

ダイヤ「……気付いてしまいましたわね」

梨子「腹違いの姉妹……」

ダイヤ「そうですわ、わたくしたち4姉妹には母が2人います」

ダイヤ「わたくしとサファイア」

ダイヤ「あなたとルビィで母が違いますの」

梨子「だから、ルビィちゃんとダイヤさんはあまり似てないんですね」

ダイヤ「……」

梨子「でもどうしてそんな――」

ダイヤ「離れ離れにならなくてはいけなかったのか、ですわね」

ダイヤ「善子さんのお母様とあなたのお母様は、わたくしのお母様の姉妹です」

ダイヤ「子宝に恵まれなかった2人はあなたと善子さんを養子に迎え入れました」

ダイヤ「そしてあなたは桜内梨子として」

ダイヤ「善子さんは津島善子として生きることになりました」

梨子「……」

梨子「どうしてダイヤさんはそのことを話してくれたんですか？」

ダイヤ「……本当は話すつもりはありませんでしたわ」

ダイヤ「こんなことを言っても悪戯に混乱させるだけだと」

梨子「ならどうして――」

ダイヤ「2度と会えないと思っていたあなたに会えて――」

ダイヤ「サファイアも加えて一緒にAqoursで活動できて」

ダイヤ「私に欲がでてしまったのです」

ダイヤ「あなたに、サファイアに、姉と呼ばれたいと」

梨子「ダイヤさん……」

ダイヤ「ごめんなさい、こんなことを言っても迷惑でしょう……？」

ダイヤ「わたくしのわがままに付き合わせてしまってごめんなさい」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

ダイヤ「どうかこのことは忘れて――」

梨子「……ばかお姉ちゃん」

ダイヤ「え……？」

梨子「そんなの聞いちゃったら、忘れられるわけないじゃないですか」

梨子「それに、私もお姉ちゃんほしい気持ちもあったし……」

ダイヤ「ガーネット……！」ﾊﾟｱｱｱｱｱｱｱ

梨子「でもガーネットっていう名前は、その慣れなくて」

ダイヤ「そ、そうですわよね！」

梨子「ごめんなさい……」

ダイヤ「いえ、いいですわよ」

ダイヤ「……もう一つわがまま言っても良いですか？」

梨子「……はい？」

ダイヤ「妹なのですから、敬語はやめにしてほしいというか」

梨子「……」

梨子「……ほんとわがままなお姉ちゃんなんだから」

ダイヤ「梨子さん……！」ﾊﾟｱｱｱｱｱｱｱ

梨子「あの、お姉ちゃん」

ダイヤ「はい？」

梨子「妹にさん付けって、おかしいと思うんだけど――」

ダイヤ「それもそうですわね！」

ダイヤ「で、では、梨子……」

梨子「お姉ちゃん」

ダイりこ「」ｶｱｱｱｱｱｱｱｱ

ダイヤ「け、結構恥ずかしいですわね」

梨子「う、うん」

梨子「……」

梨子「あのね、お姉ちゃん」

ダイヤ「なんですの？」

梨子「私からもわがまま、いいかな……？」

ダイヤ「なんですの？」

梨子「その、ぎゅってしてほしいなって」ﾓｼﾞﾓｼﾞ

ダイヤ「ぎゅって、ですの？」

梨子「だ、ダメならダメで良いから！」

ダイヤ「いいですわよ」ﾊｸﾞｯ

梨子「っ！」

ダイヤ「見かけによらず甘えん坊ですのね」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

梨子「だ、だってお姉ちゃんがいたらしてもらいたいって思ってて――」

ダイヤ「わたくしがお姉ちゃんですから、いくらでも甘えていいんですのよ」

梨子「……うん」

梨子「お姉ちゃん」ｷﾞｭｯ

ダイヤ「ありがとう、梨子」

ダイヤ「わたくしのわがままに付き合ってくれて」

梨子「姉妹なんだから、気にしないで」

ダイヤ「……ありがとう」

――
後日・黒澤家

梨子「こんにちはー」

ルビィ「あ、梨子さんいらっしゃい！」

ダイヤ「ガーネット、ルビィ。違うでしょう？」

善子「そうよ、ガーネットお姉ちゃんはただいま、ルビィはおかえりでしょ？」

ダイヤ「サファイアは物分りがいいですわね」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

善子「えへへー、お姉ちゃんの妹だもん♡」

梨子「そ、そう、よね？」

梨子「た、ただいま」

ルビィ「えへへ、おかえり、ガーネットお姉ちゃん」ﾆｺｯ

善子「それにしても私たちが姉妹だなんてびっくりしたわ」

ルビィ「ねー、ルビィも知らなかったよ」

梨子「私もお姉ちゃんから教えてもらった時はびっくりしちゃった」

梨子「ね、お姉ちゃん？」ｷﾞｭｯ

ダイヤ「わたくしが勝手に教えてしまったんですけどね」

梨子「でも、今となってみると教えてもらってよかった」

梨子「お姉ちゃんに甘えられるし」ｷﾞｭｯ

ダイヤ「もう、ガーネットったら」ｸｽｯ

善子「もう、ガーネットお姉ちゃん、ダイヤお姉ちゃんにくっつきすぎ！」

梨子「いいじゃない姉妹なんだから」

善子「サファイアも甘えたいの！」ｷﾞｭｰｯ

ルビィ「る、ルビィも！」ﾀﾞｷｯ

梨子「あぁ！ もう、お姉ちゃんは私のなんだから！」ｷﾞｭｰｯ

ダイヤ「もう、甘えん坊な妹たちですわね」ｸｽｸｽ

おわり