穂乃果「えっ、ゲーム…? なになに、どういう意味なの? 真姫ちゃ──」ブツ
シュゥン
真姫「…ふぅ」スッ
真姫(そう口にして、私は頭につけていたヘッドフォンに似た機械を机の上に置いた)
真姫「んん~~…っ」 グググググ
真姫「はぁ! さぁて、ゲームをクリアしたついでに紅茶でも飲みましょうか」スクッ
タッタッタ
キュッキュッ……ジャー
真姫(家に居た頃は紅茶を飲むのにヤカンでお湯を沸かすなんて発想なかったわ)
真姫「全く、ウォーターサーバーが無いと不便よね」
真姫「パパったら、いつになった届けてくれるのかしら?」
カチッ…──ボォ
真姫「……」
真姫(無茶ばっかり言うし、先のことなんてな~んにも考えてなくて──)
真姫(高校の頃の私にはそんな穂乃果が魅力的に映ったけど、今じゃただの子供ね)
真姫(本当、高校の頃に告白なんてしなくて正解だったわ)
真姫(告白しなかったことを今まで何度も後悔してきたけど、これでぐっすり眠れそう)
真姫(春休みが終わったら大学でゲームを貸してくれた“まこ”にお礼言わなきゃ♪)
真姫(その後、私が穂乃果のことをフったりしたらどうなるのかしら?)
真姫(引き留めてくれる? あっさり諦めて、海未やことりと付き合うんじゃ……)
真姫「!」ハッ
真姫(フン、いいじゃない! それなら尚更未練が無くなるわよ! ……よし!)
タタタッ
スッ……カチャ
真姫「待ってなさい、穂乃果! 今まで私を悩ませてきた分、こっ酷くフってあげるんだから!」
ポチ
ブウゥン
───────────
─────────
───────
真姫「あっ」
真姫(そうだわ。さっきゲームを止める時、リセットボタンの方を押したんだった)
真姫(それじゃあ、また始めからになってしまったのね……)
真姫「はぁ…」
???「あれ~? 今ので演奏終わりなの?」ガララ
???「えぇ~? 私、あなたの演奏に一目惚れしちゃってたのになぁ~…」
真姫「そんな風に褒めて、私のことをアイドルグループに入れるつもりなんでしょ? ……高坂穂乃果さん」
穂乃果「うぇぇぇーーっ!!?」ドキーン
穂乃果「なんでなんで!? 私の名前まで……どぉーして知ってるのぉ~!?」ズイ
真姫「んもぅ! そんなの知ってるに決まってるでしょ! 5回目なんだからぁ!」グイイ
穂乃果「5回……目?」キョトン
真姫「そう、あなたはゲームのキャラクターなの」
真姫「このゲームが私の記憶から作り出した現実にモデルの居るキャラクターよ」
真姫「だからあなたにとっては初対面でも、私にとっては知人なのよね」
穂乃果「へ、へぇ~…そうなんだぁ~。ふんふん……」
穂乃果「じゃあ、話は早いよね!? 知人だったら私の頼みを聞いて──」
真姫「待って! まだ私の話は終わってないわよ」
真姫(私は目的を果たせなかったことへの不満から、穂乃果へ当てつけるように説明した)
真姫「脳に直接データをインストールするから、何もかもが本物と同じように感じられるのよ」
真姫「ついこの間までTVに線をつないでピコピコやっていたんだから科学の進歩って凄いわよね」
穂乃果「うぅぅ…。つまり、どういうことなの……??」
真姫(ふふ、期待通りの反応。どうせすぐ消すんだし、もっと発散しちゃおうかしら?)
真姫「そうね。言ってしまえば、あなたは私の暇潰しの為だけに生まれた存在なの」
真姫「リセットボタン一つで消えるただのゲームデータ。所詮、偽物なのよ」
穂乃果「……ムムムッ!」
真姫「設定? 設定じゃないわ、本当のことよ。偽物に偽物って言って何か悪い?」
穂乃果「……あなた、名前は?」
真姫「西木野真姫。本物の穂乃果は私のことを真姫って呼んでいたわ」
穂乃果「じゃあ、真姫ちゃんで」
穂乃果「真姫ちゃんって、普段から友達に少し変わってるって言われるでしょ~?」
真姫「そんなこと、一度も言われたこと無いわよ」フン
穂乃果「友達が居ないから?」
真姫「はっ? …──はぁぁぁぁあ!!?」ドキーン
真姫「違っ!! ちゃんと居るわよ!!」ガタッ
真姫「!」ハッ
穂乃果「さっきまで冷静だったのに、急にムキになっちゃって怪しいなぁ~??」
真姫「むぅ~~…っ!!」プクー
真姫(初対面の相手に向かって何なのよ、その態度! イミワカンナイ!!)
真姫(そう、穂乃果ってこういう奴なのよね! こんなのに私はいつまで拘って──)
穂乃果「…真姫ちゃん、勿体ないよ。こんなに可愛くてピアノも歌も上手いのに」
真姫「な゛…っ!? きゅ、急に何よ!?///」キュン
真姫「お断りします!」
穂乃果「えぇ~? やろうよぉ~。私、真姫ちゃんのこともっと知りたいしぃ~」フリフリ
真姫「お断りします!!」
穂乃果「真姫ちゃんと一緒に歌って踊れたら絶対楽しいと思うんだけどなぁ♪」 ニコッ
真姫「くぅ……」クラリ
穂乃果「ほ~ら、真姫ちゃんにとってこの世界はゲームなんでしょ?」
真姫「!」ハッ
穂乃果「ゲームならいぃぃ~~っぱい、楽しまなきゃ!! ねっ♡ ねっ♡」
真姫「……」
真姫「そう、これはゲームなのよね。私ったら、偽物相手にムキになっちゃって馬鹿みたい」ハァ
穂乃果「へっ…?」キョトン
真姫「短い間だったけど──サヨナラ、穂乃果」
穂乃果「サヨナラ……って?」
穂乃果「!」ハッ
穂乃果「わぁ~!! ごごごごめんね、真姫ちゃん! 私、ちょっと失礼だったよね!?」
穂乃果「でも、私どぉ~しても真姫ちゃんと一緒にアイドルがやりたいの! だから──」ブツ
シュゥン
真姫「…ふぅ」スッ
ピュォォォオオオオオ…
真姫「えっ…? …──あっ!」
真姫(台所の方からする聞き覚えのある音で我に返り、思わず時間を確認した)
真姫「今のでこんなに時間が経ったっていうの? じゃあ、お湯はぁ!?」
真姫「……」
真姫「残ったのはたったこれだけ?」
真姫(一応、この量で紅茶を作ってみた)
ゴクン
真姫「ヴェ…酷い味ね」
真姫「──って、こんなの紅茶を飲んだ内に入らないわよ!!」ドン
真姫「さっとフッて終わりにするハズだったのに“あの子”のせいで、もお~!」
真姫「これは一言文句言ってあげなきゃ気が済まないわよねぇ!?」ズカズカ
スッ……カチャ
真姫「えい!」ポチ
ブウゥン
───────────
─────────
───────
穂乃果「真姫……ちゃん」ポロポロ
真姫「ヴェェ!!?///」ドキ
真姫「な、何泣いてるのよ!? どういうつもりよ!? 離れなさいよ!!」ブンブン
穂乃果「やだ…。だって離したら真姫ちゃん、また穂乃果のこと消しちゃうんでしょ?」
真姫「はぁ?」
真姫(穂乃果を消す…ですって? 私、まだリセットボタンなんて押して無いわよ?)
穂乃果「さっき真姫ちゃんの言ってたこと、全部本当だったんだね」
穂乃果「……私、ゲームだったんだ」
真姫「……」
真姫(何よこれ? 何なのよ、この反応? この子に一体何があったって言うのよ?)
穂乃果「怖かった…! このまま死んじゃうんじゃないかって思ったんだよ!」ブルブル
真姫(嘘…ゲームのキャラクターにゲームを切られた自覚があるなんて──)
真姫(もしかして、私がゲームのキャラクターだってことを教えてしまったから?)
穂乃果「真姫ちゃん! ごめんなさい! 失礼なこと言ったの全部謝るから!」バッ
穂乃果「真姫ちゃんの言うこと何でも聞くから! 穂乃果のこと……消さないで」グス
真姫「!!」ドクン
真姫「はぁ…はぁ…はぁ……」ギュゥゥゥ
穂乃果「真姫……ちゃん?」
ドッドッドッ
真姫「じゃあ──」
真姫(待って!! 駄目よ!!)
真姫(データの……偽物の穂乃果相手だからって、“それ”は絶対!)
真姫(汚れちゃう…! 私と穂乃果の本物の思い出まで……全部……)
真姫(でも──)
真姫「脱いで」ボソ
穂乃果「……………………………………………えっ?」
真姫「着てる物、全部脱いで。でないと今度は本当に消す……わよ?」ハッ…ハッ…
真姫(だって、私が本当に欲しかったのは綺麗な“だけ”の思い出なんかじゃなくて──)
真姫(穂乃果という“その人”だったんだもの……)
スルスル…パサ
穂乃果「ぜ、全部脱いだよ? これでいいの? 真姫ちゃん…///」ジトッ
真姫(胸やアソコをあんな風に隠したりして、一応穂乃果にも羞恥心はあるのね)
真姫(出会った頃だからか、筋肉の量が少なくて、より一層柔らかそう……)
真姫(あっ。何よ、靴下脱ぎ忘れてるじゃない。何というか、穂乃果らしいわね)フフ
穂乃果「うぅ…これでもう私のこと消さないでくれるんだよねぇ?///」 モジモジ
真姫「まだ服を脱いだだけじゃない? そんなので私が満足すると思ってる?」
穂乃果「そんな……」
真姫「いらないわよ。そんなの見せられてどうしろって言うのよ?」
穂乃果「え? じゃあじゃあ、え~~っと……う~~んと…──あ~~」
真姫「馬鹿ねぇ…。いい? 脱いだ制服の上に仰向けになって寝るの」
穂乃果「こ、こう?」ゴロン
真姫「そう。それから……ね」スッ
穂乃果「何するの? あっ」
穂乃果「!!」ビクゥ
穂乃果「わぁ~~~!!? 何やってるの!? そんなの駄目駄目駄目~~!! あああああ!!!///」
真姫(……知識だけはあった)
真姫(私は、出会った頃の穂乃果に“本物の穂乃果でさえまだ知らないかもしれない”体験をさせてあげた)
真姫「…──静かね」
真姫(気付くと、私は静まり返った音楽室で余韻に浸っていた)
真姫『んぅ……』
真姫(穂乃果の唇を強引にこじ開け、舌を入れて唾液を流し込む。なるべく下品に)
真姫(退路を失った私にはもう守るべき純潔は無く、ただ欲望のままに行動した)
真姫「……ふふっ」
真姫(思い出し笑い)
真姫(私がファーストキスをあんな獣のようにするなんて、思ってもみなかったわ)
穂乃果『真姫ちゃん……』
真姫(穂乃果の青い瞳が小さく震えていた。それがとても脆く儚いものに見えて)
真姫(私は尚更、興奮していた)
真姫(今、ここをこんな風に触ったら穂乃果はどんな反応をするのかしら?)
真姫(次から次へと浮かぶ私の疑問に、穂乃果は全身を使って答えてくれた)
真姫(そして、私が満足する頃には穂乃果は疲れ切って眠ってしまったのだった)
穂乃果「んぅ……真姫ちゃん」
真姫「……」
穂乃果「あっ。…おはよう?」
真姫「おはよう? じゃないわよ。勝手に寝たりして、あなたそんなに消されたい?」
穂乃果「!!」ビクッ
穂乃果「わぁ~~~!!! ごめんなさいごめんなさい!!」
穂乃果「私、気持ち良くなっちゃって、その……つい!!」
真姫「えっ///」ドキッ
真姫(不意打ちだった)
穂乃果「へっ? う、うん…」
穂乃果「最初は『うわ~! 私、これから乱暴されちゃうの~!?』って思ったんだけど……」
穂乃果「けど、途中から“アレ”が真姫ちゃんの愛情表現なんだって気付いてホッとしちゃった♪」
真姫「あ、あんなの愛情表現じゃないわよ!」フン
穂乃果「えへ、真姫ちゃんは本当に穂乃果のこと……じゃなかった! えっと──」
穂乃果「本物の穂乃果のことが好きなんだね!」
真姫「ヴェ!? ち、違っ…!///」ハッ
真姫「……」
真姫「…違うわ。本当に、違うの」
穂乃果「えっ?」キョトン
真姫(そう、“あなた”に触れてしまった時点でもう本物の穂乃果を好きだなんて言える資格無いのよ)
穂乃果「あっ、もう服着ていいの?」
真姫「続きがしたいって言うのならそのままでもいいけど?」
穂乃果「はわわ…/// 着させて頂きます!!」
カサカサ
真姫「……」
真姫(穂乃果の綺麗な白い肌が布で隠されていく)
真姫(さっきまであんなに艶めかしい桃色に染まっていたのに……)ムラ
真姫(! やだ、思い出したらまたしたくなっちゃうじゃない!)
真姫(私ってば、穂乃果に服を着るよう言ったばかりなのに……格好悪いわね)ハァ
真姫「何よ? 見れば分かるわよ。なんで一々報告するのよ?」
穂乃果「いや~、だって、この後何していいのか分からないし……」
真姫「ハァ?」
穂乃果「えっと、ほら! 真姫ちゃんの言う通りにしないと私消されちゃうから……」
真姫「別に、消さないわよ」
穂乃果「へっ? …消さないの?」
真姫「消してどうするのよ」
穂乃果「え゛ぇ゛!? だって、さっきは私のこと消したじゃん!!」ズイイ
真姫「ちょっ!?/// し、知らなかったのよ! あなたが苦しむようなことになるなんて」
穂乃果「じゃあ……」
真姫「消すわけないじゃない。──だって」ソッ
真姫「もう、私はあなたのことを手放せそうに無いんだから」フフフ
───────────
─────────
───────
凛「はぁ~お腹が空いてこれ以上動けな~~い…」フニャ
海未「凛!」
花陽‎「凛ちゃん!」
にこ「もう! 本番前だってのにだっらしないわねーー!!」
希「まぁまぁ。絵里ち」
絵里「そうね、今日の所はこれ位にしておきましょう。──海未」
海未「はい。では、また明日の早朝から練習を再開します」
ことり「じゃあ、私は衣装を作りに行くね♪」
海未「ことり、無理だけはしないように」
真姫「私も何曲か弾いてから帰るわ」
海未「これから音楽室へ行くのですか?」
真姫「何?」
海未「いえ。本番前ですから、帰ったらちゃんと休んで下さいね」
真姫「言われなくても分かってるわよ」フン
真姫「」チラ
穂乃果「!」ハッ
穂乃果「真姫ちゃん、ピアノ弾くんなら私も聞いてっていいかな!?」
真姫「…別に、構わないけど」
海未「穂乃果、真姫にワガママ言って何曲も弾かせたりなどしてはいけませんよ?」
穂乃果「ムッ!」
穂乃果「海未ちゃんこそ、後から聞きたくなったとか言ってこっそり覗いたりしないでよね!」
海未「? …は、はあ」
真姫(ふふふ)
真姫「穂乃果……あっ」ピクン
穂乃果「うしし♪ 真姫ちゃんの弱点ってここら辺だよねぇ? うりうり~♪」
真姫「やっ! やだ……違うの!」
穂乃果「真姫ちゃん…?」
真姫「もっと…少しずつ丁寧にして……」
穂乃果「丁寧…丁寧……それじゃあ、こんな感じ?」
真姫「んっ…。そう、やれば出来るじゃない……」
真姫(私は穂乃果の暖かな手でゆっくりと身体をなぞられるのが好きだった)
真姫(──あの後、穂乃果にはいつも通りスクールアイドルとしての活動をさせた)
真姫(この世界は現実に忠実だから、変なことをしたら取り返しがつかなくなるし)
真姫(そうなったら最後、リセットするしかなくなるの。ここに居る穂乃果ごとね)
真姫(だから普段はこうして音楽室に鍵をかけ、誰にも気付かれないようしていた)
真姫「何…?」
穂乃果「真姫ちゃんはあの日からずっとゲームをし続けてくれてるんだよねぇ?」
真姫「そうね。こんなに長く続けたのは初めてかも……」
穂乃果「あれから何ヶ月か経ってるけど、ゲームの外の真姫ちゃんは大丈夫なの?」
穂乃果「その……何にも食べてなくて死んじゃったりとか?」
真姫「馬鹿ね。たかがゲームでそんな大事になる訳ないでしょ?」
穂乃果「でもでも! 真姫ちゃんがここに居たら外では動けないんじゃない??」
真姫「何よ、私に居なくなって欲しいの? あなた、私がやめたら消えちゃうのよ?」
穂乃果「うっ…」
真姫「あんなに怯えていたじゃない。もう一度そんな怖い思いしたいって言うの?」
穂乃果「ま、真姫ちゃんが死んじゃうくらいなら私我慢するよ!!」
穂乃果「あの時は急だったから驚いちゃったけど、分かってれば平気だもん!!」
穂乃果「平気……だから」
真姫「穂乃果……」
真姫「ねぇ、穂乃果…」
穂乃果「なぁに、真姫ちゃん?」
真姫「私はもうあなたのことを消さないって言ったハズよねぇ?」
穂乃果「い、言ってたけど…。けど、だからって真姫ちゃんが無理をしちゃ──」
真姫「聞いて。なら、どうしてこう律儀に音楽室へ来てくれるのよ?」
穂乃果「……へっ?」
穂乃果「あ、あれ? 真姫ちゃん、『練習の後したい』って合図送ってたよねぇ?」
真姫「送ったわよ。で、なんで穂乃果はそれを無視しないのかって聞いてるの」
真姫「もう消されないんだったら、私の合図になんて従う必要ないでしょ?」
穂乃果「あっ」
真姫(…もし、穂乃果がそれに気付いていないだけなのならいい機会だと思った)
真姫(穂乃果が単なる恐怖心から私に身を寄せているのなら、ここで終わらせよう)
真姫(そう思える位に私はこのゲームの、偽物の穂乃果のことを好きになっていた)
真姫(あなたにフられれば、きっと今度こそ“穂乃果への想い”を断つことが出来るわよね?)
真姫「えっ?」
穂乃果「だって……だって、私は──」
穂乃果「私は真姫ちゃんとしたくてここへ来てるんだもん!!」
真姫「……」
真姫「…ヴェェ!!?///」ボッ
真姫(その回答は、全く予想外のものだった)
穂乃果「へぇ~、そうなんだ。でも、私は本当に真姫ちゃんとするの好きだよ!」
真姫「どうして!? どうしてよ!?」
穂乃果「どうしてって言われても……」
穂乃果「ん~…真姫ちゃんに色々教えられちゃったから、かなぁ? てへー///」テレ
真姫「穂乃果……」
穂乃果「それに真姫ちゃん可愛いし、柔らかいし、オマケにいい匂いもするし!」
穂乃果「そんな子に誘われたら穂乃果じゃなくたってついてっちゃうよ~?」ヒヒヒ
真姫「ちょっ!? 何言ってるのよぉ~!!///」カァァ
穂乃果「ズバリ! 真姫ちゃんは本物と偽物、どっちがいいのでしょうか!?」
真姫「……なんでそんな質問するのよ?」
穂乃果「いいから答えてよ、真姫ちゃん!」
真姫「……」
真姫「──別に、そんなのどっちだって構わないわ」
穂乃果「おお!?」
穂乃果「あっ……あああ! えっと、え~っと……そうだ!」
穂乃果「ま、ままま真姫ちゃん!」
真姫「だから何──ぁ」
真姫(穂乃果の顔が近付いてくる)
……チュッ
真姫(キス。──と、言うにはあまりにも子供っぽいもの)
真姫(けど、穂乃果のそれは私の性欲を満たすだけものとはまるで違っていた)
真姫(そうか。“本当のキス”ってこういうものだったのね)
真姫「穂乃果……」
穂乃果「真姫ちゃん……あっ」
穂乃果「あの……こ、こんな恋愛ド素人の私ですが今後とも宜しくお願いします!」
真姫「……ぷっ、何よそれ?」
真姫「告白の台詞くらいちゃ~んと考えておきなさいよね! ……ふふふ♡///」クスクス
真姫(そうよね。いつでも真っ直ぐなあなたなら嫌なことなんて初めから断ってるわよね)
真姫(そんな当たり前のことにも気付かないんだから、私もまだまだだわ……)ハァ
真姫(けど、こうして恋人同士になったんだし、これから一緒に理解を深めて行きましょう。穂乃果♡)
真姫「ええ、大丈夫よ。心配かけさせて悪かったわね。納得出来るよう説明するわ」
真姫「まず、ゲームの中での時間の流れ方は自分で決められるの」
真姫「デフォルトが“ふつう”。外の時間と同じ流れね。そして、今は“はやい”になってるわ」
真姫「“はやい”だから、ここに何ヶ月居たって外ではそんなに時間が経っていないハズよ」
穂乃果「そ、そうなんだ……」ホッ
真姫「まぁ、でも穂乃果の心配も正しいのよね」
真姫「時間が経つのに変わりはないから、トイレとかの問題も出て来るし……」
穂乃果「えぇ~~!? それって一番駄目なんじゃない!?」
真姫「もう、一々大声出さないで! それも大丈夫なのよ。……ほら」ビッ
穂乃果「えっ…? 穂乃果?」キョトン
真姫「あなたはこのゲームに作られたキャラクター、そうよね?」
穂乃果「…うん。 私は真姫ちゃんの記憶から作られたゲームのデータだよ」
穂乃果「一度消えるまでは周りの人と一緒で自分のこと本物だって思ってたけどね」
穂乃果「でも、それが今の話と何の関係が?」
真姫「鈍いわねぇ…」
真姫「いい? 記憶からでも他人を作り出すことが出来るのよ。他人が作れるのなら」
真姫「本人なんて、もっと簡単に作れると思わない?」
穂乃果「!」ハッ
穂乃果「まさか、真姫ちゃんも穂乃果と同じゲームのデータだったのぉ!?」ガーン
穂乃果「そっかぁ。私、今まですっかり騙されてたんだね……」シュン
穂乃果「でも、いいよ! 偽物同士、これからも仲良くやろうよ偽真姫ちゃん!」
真姫「はぁ~~~…。私がデータだったら本物はどこに居るっていうのよ?」ツン
穂乃果「あぅ」
真姫「そうじゃなくて、私がゲームをしてる間は私のコピーが身体を管理してるのよ!」
穂乃果「え……えぇぇ~!? 偽物が本物の身体を動かしちゃってるってこと!?」
真姫「簡単に言えば、そういうことになるわね」
穂乃果「」
真姫「まぁ、確かにこの頃の人達には人間のオートパイロットは抵抗あるかもね」
真姫「けど、この時代にもCPUによるゲームのオートプレイはあったハズよ」
真姫「それが発展したものだと考えれば、それほど不思議なことじゃ無いんじゃない?」
穂乃果「う~~ん、そうかなぁ…?」
真姫(長くなったわね。そろそろ限界かも……)
真姫「ねぇ、もういいでしょ? 早く続き、しましょうよ?」 モジモジ
穂乃果「続き? ……ああ!」ポン
真姫「半端に止められて、さっきから身体が疼いてるの。ほら、早く…」
穂乃果「真姫ちゃん、真姫ちゃん」
真姫「何よ?」
穂乃果「今のおねだりする真姫ちゃん、すっご~~~~~く、可愛い♡」
真姫「──っっっ!!///」ボシュッ
───────────
─────────
───────
真姫(私の後ろからビニール袋の上下に揺れる音がする)
穂乃果「──…ま、真姫ちゃん」
真姫「何?」
穂乃果「もう少しゆっくり歩こうよ」
真姫「どうしてよ?」
穂乃果「私、買い物袋2つ持ってて重いか ら……」
真姫「ねぇ、私は初めから1つずつ持ちましょうって言ったわよね?」
真姫「ジャンケンで負けた方が2つ持とうって言い出したのは穂乃果じゃない?」
穂乃果「そうだけどさぁ……うぅ」フラァ
真姫「もういいわ。1つ貸しなさいよ」スッ
穂乃果「!」
グググ…
真姫「ちょっと、どういうつもり!?」イラ
真姫「既にジャンケンで負けてるじゃない! 負け犬よ! 負け犬穂乃果!」
穂乃果「あぁ~~!! 真姫ちゃん、今私のこと負け犬って言ったぁ!?」
真姫「はぁ…」
真姫(この際、ここ最近溜まりに溜まった不満をぶつけてしまおうと思った)
真姫「言ったわよ! 実家を追い出されて私のマンションに居座ってる負け犬よ!」
穂乃果「違っ! 追い出されてないもん! 自分から出たんだもん!」
真姫「一緒でしょ! もう大学生なんだから自分の寝床くらい自分で見つけなさいよ!」
穂乃果「もう~! 真姫ちゃんのお金持ちぃ! 知らない!」プイ
真姫「ナニソレ! イミワカンナイ!!」
真姫「……」
真姫(気付けば、片方の袋は穂乃果の右手に。もう片方は私と穂乃果が2人で持つ形になっていた)
穂乃果「……」
真姫「……」
真姫(手は、繋がっていた)
穂乃果「…………………真姫ちゃん」
真姫「…何?」
穂乃果「えっと……さっきはごめんね?」
真姫「いいわよ。あなたに迷惑をかけられるのは高校の時からずっとだもの」
真姫「もう慣れたわ」
穂乃果「……」
真姫「あなたはこれからも死ぬまで一生私に迷惑かけ続けてくれるんでしょ?」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)
穂乃果「へっ…?」キョトン
真姫「現実の、ゲームの世界じゃない方の私はこの帰り道を1人で歩いていたの」
真姫「ずっと、あなたとこんな風に喧嘩をしたり、手を繋いで歩くのに憧れてたのよ」
穂乃果「真姫ちゃん……」
真姫「ふふ……ふふふふふふふ♪」クスクス
穂乃果「ひぃ!? 急に笑い出したりしてどうしたの、真姫ちゃん!?」ビクゥ
真姫「ふふふ♪ ごめんなさい。そうよね、穂乃果は知らないのよね」
真姫「じゃあ、教えてあげるわ。明日は……」
真姫「明日は、私とあなたが初めて出会った日なのよ」
穂乃果「…んんっ? 私と真姫ちゃんが出会った日ってもうちょっと先じゃない?」
真姫「まぁ、普通はそういう反応をするわよね」
真姫「いい? 私が現実でゲームを始めて、あなたに出会った日。当日よ、当日」
穂乃果「え~~っと……つまり、外の時間に追いついちゃったってこと?」
真姫「そういうことよ」
穂乃果「……」
真姫「…穂乃果?」
穂乃果「お…おお? おおおー! それって何だかすっご~~~い!!」キラキラ
真姫「デッショー!」フフン
真姫(今の間は何よ?)フフフ
真姫「…それ、穂乃果が今食べたいだけでしょ? 誕生日じゃないんだから却下よ」
穂乃果「むぅ…! それなら、真姫ちゃんはどうしたいの~?」
真姫「そうねぇ。私は……」
真姫「///」ゴニョゴニョ
穂乃果「えっ? えっ? なになに??」
真姫「明日1日ずっと……ね?///」ゴニョニョ
穂乃果「わ、わぁ~……あはははは」
穂乃果「真姫ちゃん、気合い入りすぎ……」
真姫「当然でしょ! やること残しといたら明日集中して出来なくなっちゃ──」ガチャ
真姫「えっ」
穂乃果「どうしたの? 真姫ちゃん」
真姫「鍵が、開いてる…」
穂乃果「あっ」
真姫「『あっ』って、まさか……ほぉ~~のぉ~~かぁ~~??」ズイイ
穂乃果「うっ…」
真姫「私、出る時ちゃんと鍵閉めといてって言ったわよねぇ!? ねぇ~!?」
穂乃果「ごめんなさい! ごめんなさい! ついうっかり!」
真姫「もう~! 帰ったら“リテイク”よ、“リテイク”! いいわね?」
穂乃果「は~~い……」シュン
真姫(私はいつものように大学で“まこ”から貸りたゲームを穂乃果に渡す)
穂乃果「う、うん…」カチャ
真姫「やり直すのは今日家を出るところよ。今度はちゃ~んと鍵を閉めなさい?」
穂乃果「……あのさ」
真姫「何よ?」
穂乃果「私はこのゲームのキャラクターで、ここはこのゲームの世界なんだよねぇ?」
真姫「そうだけど?」
穂乃果「じゃあ、なんでゲームの世界でゲームの私がこのゲームをやってるの!?」
穂乃果「これ絶対おかしいよぉ!!」
真姫「はぁ…。いいから、さっさと始めなさいよ!」ポチ
穂乃果「あああ~~…」
ブウゥン
穂乃果「」
真姫(やり直したい過去をやり直せるんだから、こういった教育にも使えるのよね)
真姫(こんな使い方を思い付くんだから、やっぱり私って頭がいい♪)
穂乃果「……」
真姫「?」
真姫(鍵を閉めるだけなんだから、一瞬で終わるハズ…よね?)
穂乃果「…………………………………………………」
真姫「」ソワソワ
真姫「」ソワソワ
真姫「…穂乃果?」 ジィ
穂乃果「」ピク
穂乃果「終おおおわったよぉ!! 真姫ちゃ~~ん!!」バッ
真姫「きゃあっ!?」コテン
穂乃果「あれ?」
真姫「ちょっとぉ! 急に動き出さないでよ! ビックリするじゃない!」ドキドキ
穂乃果「あはは、ごめんごめん♪」ニコニコ
真姫「むぅ~…」プクー
穂乃果「!」ギクッ
真姫「さては、鍵なんてどうでもいいからって別の場面を選んだんじゃな~い?」
穂乃果「違っ! 言われた通り、ちゃんと家を出るとこから始めたよぉ!」キリッ
真姫「本当にぃ~?」ジトー
穂乃果「鍵だってちゃあ~んと閉めて来たもん!」
真姫「そう……」
真姫(穂乃果の言葉を信じたとして、どうして上機嫌になって帰ってくるわけ?)
真姫(家に鍵をかけた後…? その後に何かいいことでもあったのかしら?)
真姫(これから起こるいいことって……明日? 明日は…………──っ!!!///)ハッ
ガシッ
穂乃果「へっ…?」
真姫「まさか…まさかまさかまさかぁぁぁああ……」ワナワナワナ
穂乃果「ま、真姫……ちゃん?」
真姫「まさか、一足先に私と朝までしてきたんじゃないでしょうねぇ~~!!?///」ボシュウ
穂乃果「え、えぇぇ~~!!?」
穂乃果「う、うん…」
真姫「何よ! 勿体ぶるから変な勘違いしちゃったじゃない!!」
穂乃果「だって、ホントのこと言ったら真姫ちゃん怒るかなぁ~と思って……」
真姫「怒るどころか呆れたわよ」ハァ
真姫「こんなことで喜んじゃうところが、さすが穂乃果って感じよねぇ…」
真姫「ねぇ、このゲームは何でもやり直せるのよ? もっと大きなことをしなさいよ」
穂乃果「もっと大きなことって……例えばどんなの?」
真姫「そうねぇ…。宝くじで一等を当てたり、とか?」
穂乃果「宝くじで一等!? そんなこと出来るのぉ!?」
真姫「簡単よ。予め当選番号を調べといて、その宝くじが売ってた頃からやり直せば……」
穂乃果「!」ピーン
穂乃果「おお、なるほど! さっすが真姫ちゃん!」
真姫「そうすれば穂乃果だって『お金持ちぃ!』になれるんじゃない?」
穂乃果「うっ…。真姫ちゃんって、結構根に持つタイプ?」
真姫「さぁ? どうかしら」フフ
真姫「気分を味わえればいいでしょ? 大体、本気でそんな大金が欲しいわけ?」
穂乃果「だってぇ、あって困るもんじゃないしぃ~」
真姫「嫌よ! 私は今のままで十分幸せなの。変に騒がれるのは御免だわ!」プイ
穂乃果「そんなこと言って、ホントは当てる方法が思い付かないんじゃなぁい?」クスリ
真姫「な゛──っ!? で、出来るわよ!!」
穂乃果「ほぉ~? それでは教えて頂きましょうか~?」ニヤニヤ
真姫「クッ…」
真姫(穂乃果に煽られて悔しい訳じゃないけど、一応方法を考えてみる)
穂乃果「へっ?」
真姫「ゲームを起動した時、記憶の中からやり直したい場面を読み込むじゃない?」
真姫「そこでなるべく近い日を選んで、新しい当選番号が発表されるまで待つの」
真姫「当選番号を確認出来たらゲームをやめて、現実の方で一等のくじを買うのよ」
真姫「そうすれば確実でしょう? つまりはゲームを使った未来予知って訳」
穂乃果「……」
真姫(穂乃果が絶句してる)
真姫(本当に宝くじの一等を当てられると知って、怖くなっちゃったのかしら?)
真姫(ふふふ♪ まだまだ私の方が上手のようね!)
真姫(私は不意に、以前起こった宝くじ絡みの事件を思い出した)
真姫(何でも、インターネット掲示板に書かれた一等の番号予測が的中して、何人も当たってしまったとか)
真姫(ニュースではその書き込みに『ゲームを使って予測した』と書かれてたって言ってたけど……)
真姫(もしかして、そのゲームっていうのは“これ”のことなんじゃないかしら?)
真姫(まこに貸りるまでゲームなんて全然興味なかったし、今まで気付かなかったわ)
真姫(だとすると、未だに販売を続けてて平気なの? それなりの対策は必要になるわよね?)
真姫(でも、対策って…。人の記憶を奪う類のものは法律で禁止されているし……)
真姫(あっ)
真姫(そうよ! そもそも体験出来ないように制限をつけてしまえばいいんだわ!)
真姫(例えば、ゲームを始めた時間より先へはいけないようにする…と……か)
真姫(──えっ?)
真姫(私が脳内の穴埋め問題を見直そうとしている時、穂乃果が話しかけてきた)
穂乃果「真姫ちゃん、さっきもそんなようなこと言ってたよね?」
真姫「…そんなようなこと?」
穂乃果「ほら、『一足先に私と朝までしてきたんじゃないか?』って……」
穂乃果「──“一足先に”って」
真姫「言ったけど、それが何よ?」
穂乃果「そっか……」
穂乃果「やっぱり真姫ちゃん、知らなかったんだ」
真姫(普段のお気楽な穂乃果とは全く違う声のトーンに私は一瞬ゾクッとした)
穂乃果「……」
穂乃果「最近、私に“他の穂乃果”とも付き合ったことがあるって話、してくれたよね?」
真姫「はぁ? ちょっと、なんで今その話が出て来るのよ!?」
真姫(そう言いながらも、頭の中では既に話の関連性を探していた)
穂乃果『…──えぇ~!? 穂乃果と付き合ったの私で4人目なのぉ~!?』
真姫『ええ。“あなたと”初めて会った時、会うのは5回目だって言ったでしょう?』
穂乃果『言ってたけど…。でもまさか全員と付き合ってたなんて夢にも思わないよ!』
真姫『違っ! 本物とは付き合えなかったんだから全員じゃないわよ!』
穂乃果『ゲームの穂乃果とは全員付き合ったんだから一緒だよぉ!!』バン
真姫『ぐぅ…!』
穂乃果『はぁ~そっか、真姫ちゃん私と初めてじゃなかったんだ。ガッカリだなぁ』
真姫『……したのは初めてだから』ボソ
穂乃果『えっ』
真姫『したのはあなたが初めてだって言ったの! 私が純潔を捨てた相手はあなただけ!///』
真姫『大体、他の穂乃果とは全員付き合い始めたところで止めてたんだからぁ!!』
真姫「!」ハッ
真姫「……嘘よ! そんなことって!」
真姫(答え合わせは終わった)
真姫(結果は……やっぱり、私の考えた通りだった)
真姫「穂乃果、あなたはいつからそれに気付いていたの…?」
穂乃果「真姫ちゃんが初めて私にそのゲームをやらせてくれた時だよ」
真姫(穂乃果にゲームをプレイさせたのは春休みが始まってすぐのことだった)
穂乃果「私の場合は真姫ちゃんと違って、その日の失敗をやり直してたからね……」
真姫(じゃあ、穂乃果はずっと知ってて…。知ってた上でいつも通りにしていたの?)
真姫「穂乃果……」
穂乃果「知ってる上で、私と一緒に居てくれてるんだって思ってたんだよ……」キュッ
真姫(穂乃果は唇を噛みしめ、今にも溢れ出しそうな涙を目に浮かべていた)
真姫(そんなことを観察出来る冷静さがあったのは、私にまだ余裕があったから)
真姫(まだ、私か穂乃果の勘違いなんじゃないかって考えが頭の片隅にあったから)
真姫(けど、そんな浅はかな希望はすぐにゲームの音声ガイダンスによって砕かれた)
『プレイデータが現実時間の24時間前となった為、終了プログラムを実行します』
『終了プログラム開始後のプレイ続行は危険な為、直ちにゲームを終了して下さい』
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真姫「どうして!? どうして終了プログラムが止まらないのよ!?」
真姫「いま時間の流れを戻せば現実の時間を越えることは無いハズでしょ!?」
穂乃果「真姫ちゃん……」
真姫「そうだわ! 一端、ゲームを中断して現実の時間を進めれば──」
真姫「……『終了プログラムの開始されたデータは二度と再開出来ません』!?」
真姫「ハァ!? 何よそれ!? イミワカンナイ!!」
穂乃果「真姫ちゃん!!」
真姫「なに!? 今忙しいんだけど!!」
穂乃果「……もういいよ。こんなことしたって時間の無駄だよ」
真姫「時間の無駄…ですって!? 私が誰の為に必死になってると思ってるのよ!?」
穂乃果「穂乃果の為でしょ? …うん、嬉しいよ」
穂乃果「けど、私はどうせなら真姫ちゃんと残りの時間を精一杯楽しみたいって思うんだぁ」
真姫「穂乃果……」
穂乃果「えっ?」
真姫「私は将来、医者になるの。時間の許す限り、あなたを助ける方法を考えるわ」
穂乃果「……そっか」
穂乃果「じゃあ、穂乃果は出かけてくるね」
真姫「どこへ行くのよ?」
穂乃果「家族……と、μ’sのみんなの所かな?」
真姫「別れの挨拶でもするつもり? 明日この世が無くなるなんて誰も信じないわよ」
穂乃果「分かってるけど、私がここに居ちゃ真姫ちゃんの邪魔になっちゃうからさ」
真姫「別に、邪魔だなんて……」
穂乃果「それじゃ、行ってきま~す!」
穂乃果「私が帰ってくるまでに思い付かなかったら……その時は観念してね?」ガチャ
パッタン
真姫「……」
真姫「……冗談じゃないわ」フルフル
真姫「あなたのことを諦めるくらいなら死んだ方がマシよっ!!」ガッシャーン!!
真姫(私は机の上にあったコップや、リモコンや、ゲーム等を腕で払い飛ばした)
真姫「はぁ…はぁ……」
真姫「……ふぅ」スゥ
真姫(思いきり叫んだお陰か、頭が冴えてきた。これならいい方法が思いつきそう)
真姫(まず、このゲームは元は自由に時間を進められるように出来ているのよね?)
真姫(なら、この終了プログラムは後付けのハズ。そう、これさえ外せれば……)
真姫(──外す? 外せるの? 時間制限も知らなかったゲーム素人の私に?)
真姫(…いえ、やるしか無いわ! 穂乃果を助けるにはそれしか無いんだから!)
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真姫(あれから何時間経ったかしら…?)
真姫(カーテンの開いたままの窓には、既に星空が映し出されていた)
真姫(あれだけ意気込んでいたのに……必死に考えたのに……)
真姫(何一つ、思い付かなかった)
真姫「……」
真姫(私はどこかで、自分のことをこのゲームの世界の神様なんだと思ってた)
真姫(けど、違った。私は単なるゲームのプレイヤーだった)
真姫(“本物の神様”におままごとをさせて貰っていただけの小娘だったのよ!)
真姫「くぅ……ぅぅ」
真姫(穂乃果……穂乃果……)
???「真姫ちゃん、泣いてるの?」
真姫「…──えっ?」
真姫(暗闇の中から今一番聞きたくて、そして一番聞きたくなかった声が聞こえた)
真姫(灯りがつき、その声の主が私の前に姿を現す)
真姫「穂乃…果? あっ……」
真姫(とうとう、穂乃果が帰ってきてしまった)
穂乃果「え、え~っと……」
真姫「///!」ハッ
真姫(穂乃果が言葉に迷ってる理由に気付き、私は急いで涙を拭った)
穂乃果「う~ん、その様子じゃ私を助ける方法は見つかんなかったみたいだねぇ」
真姫「ごめんなさい、穂乃果。私……」ジワ
穂乃果「わわっ! いいんだよ、真姫ちゃんは頑張ったよ! 凄いよ! 立派だよ!」
真姫「穂乃果……」
穂乃果「さぁ、元気出して! 最後の最後まで楽しく過ごそうよ! ねっ♡ ねっ♡」
真姫(穂乃果は、自分が助からないと知ってもいつもの調子で私を慰めてくれる)
真姫(そんな健気な穂乃果を見て、私は──)
真姫(“最後の希望”に手を出す覚悟を決めていた)
穂乃果「真姫ちゃん……」
穂乃果「そうだよね。そんな急に気持ちを切り替えたり出来ないよね。人間だもん」
穂乃果「でもさ、このままじゃ本当に後悔しか残らないよ!?」
穂乃果「私達には時間が無いんだよ、真姫ちゃん!!」
真姫「時間なら……あるわ」
穂乃果「へっ?」
真姫(私は、床に投げ出されていた“それ”を手に取った)
穂乃果「何それ…──ゲーム?」
真姫「ゲームのあなたがこれを使えたんだから、何度だって繰り返せるハズなの」
真姫「ゲームの奥へ奥へと、潜り続けられるハズなのよ! ……そう、永遠にね」
穂乃果「永遠? 何言ってるの…? 意味分かんないよ、真姫ちゃん!!」
真姫「例え何百年かかったとしても、絶対あなたを救ってみせるんだから…!」カチャ
真姫(私は最期に……大好きな穂乃果の姿を目蓋の裏に焼き付けた)
真姫「……」
真姫「サヨナラ、穂乃果」
ポチ
穂乃果「真姫ちゃ──」ブツ
シュゥン
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─────────
───────
真姫「……」
真姫「私達の今がここにある」
真姫(私にはまだ、一つだけ希望が残されていた)
真姫(それは──“あの穂乃果の存在”)
真姫(このゲームは、私が思うよりずっと精巧に作られてて……)
真姫(そんな中で唯一、自分をゲームのキャラだと自覚出来る“バグ”を持っていたの)
真姫「愛してるバンザーイ! 始まったばーかーりー!」
真姫(どんなに小さな抜け道でも穴があるのなら、それだけで可能性はある)
真姫(だったらそれを見つけるまで私は繰り返すわ。何十回でも……何百回でも!)
真姫「明日も宜しくね。まだ~…──」
真姫「ゴールじゃない!」
お わ り ?
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