

――ある日の部活後
善子「リリー、今度の日曜暇?」クイクイ
梨子「えーっと……、特に予定はないけど、どうしたの?」
善子「映画見にいかない?」
梨子「えっ? 二人で?」
善子「他の人も誘う?」
梨子「ううん! 二人で良いよ!」
善子「そっか、じゃあよろしく!」
梨子「うん!」
#1 グレイテスト・ショーマン
――日曜日
善子「リリー、今日は付き合ってくれてありがとうね。どうしても見たかったのよ」
梨子「ううん、誘ってくれて嬉しい」
善子「流石は我が上級リトルデーモンよ! 見上げた忠誠心だわ!」
梨子「はいはい。で、何を見るの?」
善子「これよ! 『グレイテスト・ショーマン』」
梨子「あー、X-MENシリーズのウルヴァリン役で御馴染みのヒュー・ジャックマン主演のフリークスによるサーカスを描いたミュージカル映画だよね。『ラ・ラ・ランド』のスタッフが音楽を手がけた事で話題になってるよね」
善子「説明ありがとう」
梨子「私も見たいと思ってたんだー」
善子「そう、丁度良かったわ」
梨子(恋愛映画じゃあないのはちょっと残念だけど……でも映画は楽しみ!)
善子「さぁ、行くわよ! 映画はヨハネたちを待ってくれないわ!」
――上映後
善子「あーっ」グスッ
梨子「良い映画だったね!」
善子「ホント、スクリーンで見て良かった……」グスグス
梨子「よっちゃん、そんなに感動したの?」クスッ
善子「だって仕方ないじゃない! あんなの普通感極まるわよ!」
梨子「うんうん。実は私も結構きてたんだけどね」
善子「はー、もう一回見に行こうかな」
梨子「あ、ちょっと待ってて。サントラ買って来るね!」
善子「あっ、待って、私も買う!」
~カフェ~
善子「ストーリーはシンプルだけど……歌と踊りが素晴らしかったわね。難しいものがない分、わかりやすくて、まさにエンターテイメントって感じ」
梨子「テンション上がるよね。もう最初のシーンからワクワクしちゃった」
善子「オーオーオオオー」ドンドンダッ
梨子「あはは」
善子「リリーはどのシーンが気に入った?」
梨子「うーん……どの曲も良かったから一つっていうのは選びづらいけど……」
梨子「やっぱりあのバーでの交渉かな? 曲がノリノリだし、パフォーマンスもかっこよかったなぁ」
善子「ああ、やっぱり。あのシーンは良かったわよね」
梨子「分け前を言い合うところとかね。真似したくなっちゃう」
善子「あのシーン、二人の踊りも良かったけど、店員さんの動きが面白すぎて好きだわ」
梨子「踊ってる、ってワケじゃあないし、普通に仕事してるだけなのに、ハマりすぎだよね」
善子「ヨハネはやっぱり最後の、主人公が再起するシーンかしらね」
梨子「あのシーンからのクライマックスへの流れはすっごく良かったね」
善子「それまでの辛い展開を吹き飛ばすかのように盛り上がって、カタルシスが凄かったわ」
―――
――
善子「気付いたらもう外が真っ暗ね」
梨子「つい話し込んじゃったねー」
善子「まだ話し足りないけれど、そろそろ帰りましょうか」
梨子「……うん。そうだね」
善子「ねぇ、リリー」
梨子「ん?」
善子「今日は楽しかったわ! また、一緒に遊びましょう」
梨子「うん! モチロン!」
まさにそう
パロディみたいなものだと思って生暖かい目でみてくんちぇ
――数日後、学校
梨子「うーん……」ウーン
善子「曲作り、難航しているみたいね」スッ
梨子「よっちゃん!」
善子「そういう時は気分転換が必要よ」
梨子「それはわかっているんだけどぉ……」
善子「難しく考えすぎず、一度頭をクリアにしてみたらどうかしら」
梨子「ボディをクリアに……」
善子「頭ね」
善子「こういう時こそ、頭を空っぽにして見る映画を見に行きましょう!」
梨子「え、えぇ~?」
善子「さぁ、行くわよ!」
#2 ランペイジ 巨獣大乱闘
~映画館~
善子「というわけで、これなんてどう? 『ランペイジ 巨獣大乱闘』」
梨子「怪獣映画かな? ゴリラと……犬? と、なんだろうこれ……」
善子「犬というより狼ね。それとワニよ」
梨子「わ、ワニ……」
善子「原作は昔のゲームのようね。遺伝子実験の失敗で巨大になった動物達が大暴れ、だって」
梨子「わかりやすそうで良いかも」
善子「では決まりね!」
――上映後、カフェ
善子「いや、思っていたより面白かったわね」
梨子「そうだね。最後の大暴れのシーンは見ごたえがあったねー」
善子「そうそう。やっぱりこういう映画は怪獣が大暴れしてこそよね」
梨子「ビル破壊とか、迫力もあって良かったし」
善子「あとジョージが可愛かった……」
梨子「わかる!」
善子「……最後のシーンでは不覚にもウルッと来てしまったわ」
梨子「ふふっ」
善子「な、何よ」
梨子「よっちゃんって結構、涙もろいんだなーって思って。この前の映画でも泣いてたし」
善子「い、いいじゃない別に」
梨子「うん。そういう所、可愛いなーって思うよ」
善子「なっ、何よー! 子ども扱いしたわね!」プンプン
梨子「そういうわけじゃあないんだけどなぁ」アハハ
善子「はぁ、ペットでも飼おうかしら」
―――
――
善子「ところで、今の映画を見て曲作りのアイデアは閃いた?」
梨子「……全く何も」ブンブン
善子「まぁ、そうよね」
梨子「でも、気分転換にはなったよ」
善子「それなら良かったわ」
梨子「よっちゃんのおかげだね。ありがとう、よっちゃん」ニコッ
善子「べ、別に、これくらいの事は当然よ……。それよりもリリーこそ、一人で抱え込まずにもう少し人に頼りなさい」
梨子「えへへ。じゃあ私がまた悩んでいたら、助けてくれる?」
善子「当たり前よ! リリーはヨハネのリトルデーモンなのだから」
梨子「ふふっ。ありがとう、よっちゃん」ナデナデ
善子「子ども扱いは禁止よ!」凸
#3 デッドプール2
善子「リリーさん、お願いがあるのですが」
梨子「どうしたの?」
善子「映画を一緒に見ていただきたいのですが……」
梨子「えっ? それくらいなら全然いいよ?」
善子「それが、続き物で多分リリーは前作見ていないのよね……」
梨子「何の映画?」
善子「『デッドプール2』っていうアメコミ原作の映画なんだけど」
梨子「んー。知らないなぁ」
善子「近作から見ても話が理解できない、なんてことは多分ないとは思うけど」
善子「一応予備知識を説明しておくと、X-MENシリーズのキャラクターで、主人公のウェイドことデッドプールは過去に末期がんに侵され、その治療の為に参加した実験によって強力な治癒能力を手に入れていて、どんな傷でもすぐに治っちゃうの。
代償として全身の皮膚が焼け爛れたみたいになって、アボカドと腐ったアボカドの子どものような醜い姿になっちゃったけど」
梨子「最後のはよくわからなかったけど……、ウルヴァリンみたいな感じ?」
善子「そうね。ウルヴァリンの能力とほぼ同じと思って大丈夫よ。爪は出ないけれど」
善子「そのデッドプールが、自分を実験体にした組織に復讐する、って言うのが前作の内容ね」
梨子「ダークなヒーローモノなのかな?」
善子「デッドプール自体がかなりのコメディリリーフなキャラだから、話自体は明るいけれど、ヒーローとしてはかなり型破りよ」
善子「ヒーローなのに不真面目で無責任だし、平気で汚い言葉を使う、悪人とはいえ人を殺す、一般人を巻き込む、そして何より……」
善子「デッドプールを語る上で欠かせないのが、”第四の壁を破る能力”ね」
梨子「第四の壁?」
善子「これを見ているそこのあなたはよく知っていると思うから、特に説明はしなくていわよね」ユビサシ
梨子「? 急に明後日の方向を指差して……どうしたの?」
善子「こんな感じで、漫画のキャラクターが読者に語りかけたりするネタを見た事がない?」
梨子「あー、たまに見るよね、そういうメタな表現」
善子「要するに”自分が漫画/映画の中のキャラクター”だと理解しているキャラクター、って感じかな? そして、それを壊して読者や視聴者に語りかける事が出来るの」
善子「第四の壁って言うのは、わかりやすく言うと物語上のキャラクターと、それを見ている観客――つまり私達――を分かつ壁、って感じね。
通常それはキャラクターには認識される事はないのだけれど、デッドプールはそれを破ってこちら側に語りかけてくる。そういうキャラって事」
梨子「よっちゃんも出来るの?」
善子「いえ、私は適当に言ってみただけよ」
梨子「だよね。そもそも私たちって物語の人物なのかな?」
善子「さぁ、どうかしら。あまり深く突っ込むと収集が付かなくなるからやめておきましょう」
梨子「とりあえずいろんな意味で、型破りなヒーローだというのはわかったかな」
善子「そうね。割と”何でもあり”なキャラよ」
梨子「面白そうだね。見てみたいかも」
善子「よし、では早速!」
――上映後、カフェ
善子「今作も面白かったわ……!」
梨子「聞いていた通り、中々にとんでもないヒーローだね……。いきなり首が吹き飛ぶし」
善子「普通にグロいシーンとかあるものねぇ」
梨子「でも全体的にテンポがよくて、緩急の付け方も上手だから上映中全然飽きなかったよ」
善子「Xフォースの流れはちょっとズルすぎるわ……!」
梨子「無駄にブラピまで使ってるし……」
善子「マジで!? はこっちの台詞よね」
梨子「あと、デッドプールがふざけてばかりいるのに戦闘になるとかっこよくなるの! 古典的だけど、やっぱりこういうのっていいよねー」
善子「わかるわ。ギャップ燃えよね!」
善子「ネタが多すぎて語りつくせないわよね。早くソフト化しないかしら……」
梨子「DVD出たら一緒に見たいね」
善子「そうね! 是非見ましょう!」
梨子「……ところで、あの、ベリショの子とユキオって子はカップルなんだね」
梨子「二人とも、女の子だよね?」
善子「ええ。そういう所もこの映画のぶっ飛んだところかも」
梨子「ふーん……」
梨子「……よっちゃん的に、ああいうのはどう? アリなの?」
善子「女の子同士のカップルが、って事?」
梨子「うん」
善子「私は堕天使よ。常識や社会通念など関係ないの」
梨子「つまり?」
善子「まぁ、少なくとも、見ている分には変な拒否感を持ったりはしないわね。最近の映画だと同性カップルが登場することも珍しくないし、それを見ても何も思わないわ。自分がその立場になったら、と言われると、なってみないとわからないけれど」
梨子「そっかぁ」
―――
――
梨子「面白かったし、前作も見たくなったよ」
善子「あ! じゃあヨハネの家にDVDがあるから今から見に来る?」
梨子「いいの!?」
善子「モチロンよ」
梨子「やったぁ!」
善子「クックック……! さぁ、今から闇の上映会の幕開けよ!」
#4 クワイエット・プレイス
――映画館
梨子「うーん……」
善子「たまには直感で映画を決めようと、宛てもなく映画館に来てみたけれど」
梨子「何を見ようか迷うね」
善子「あまり興味をそそられるものがないわねぇ」
梨子「これは? 『クワイエット・プレイス』」
善子「どんな映画なの?」
梨子「私もよく知らないけど、一応パニック系ホラーみたい」
善子「へ、へぇ。……まぁこの堕天使ヨハネには怖いものなんてないけどね」
梨子「簡単に言えば、音に反応する宇宙人みたいなのから逃げるために、できるだけ静かに生活するお話かな?」
善子「き、緊張感がありそうね……。静かな分、来るところではドカーンと来たりして……」
梨子「”音を立てたら、即死”ってキャッチコピーからして、『ドントブリーズ』を思い出すよね」
善子「見たことないわねぇ」
梨子「他に良いのがなかったらこれにしようか?」
善子「そうね。そうしましょう」
――上映後、カフェ
梨子「うーん……」
善子「意外と普通だったわね。ビックリさせるようなシーンも少なかったし」
梨子「ホラーよりも家族愛がメインみたいだったね」
善子「そうねぇ。ホラーを期待して見るとちょっと物足りなかったわね」
梨子「私は結構好きだったかも。緊張感があって見ごたえも結構あったし」
善子「ま、確かにドキドキするシーンはあったし、それなりに楽しめたわ」
梨子「そこらへんは上手だったよね。”音だけに反応する”って言うのが画期的だったかも。やっぱり静かになると自然と緊張感が高まるよね」
善子「前半は静かなシーンが多くて、ポップコーンに手を伸ばすのも躊躇われたわ……」
梨子「うんうん、わかるわかる」アハハ
善子「そういえば、あのお母さん」
梨子「うん」
善子「音を立ててはいけないっていうのに、子どもは作っちゃったのね」
梨子「あー……」
善子「産もうと思った経緯が気になるわね……」
梨子「まぁ、極限状態だと種としての本能が子孫を残そうとして性欲が増すとか増さないとか言うからね……」
善子「声は抑えられても、性欲は抑えられなかったのかしら」
梨子「あはは……」
梨子「でも私も同じ状況になったら我慢できないかも」
善子「そうかしら」
梨子「やっぱり不安になると思うんだよね。自分も相手も何時死ぬかわからないなら、出来る限り愛を育みたいよ」
善子「まぁ確かに、そうよねぇ」
梨子「そうだよ。一人になってからじゃあ寂しすぎるからね」
善子「じゃあヨハネも今のうちにリリーとの愛を育んでおくわ!」
梨子「えっ!?」アセッ
善子「と言うわけで、遊べるときにいっぱい遊ぶわよ!」
梨子「あー、うん。そうだよね」シッテタ
善子「な、何よぉ。嬉しくなさそうね」
梨子「んー、別にー。よっちゃんらしいなぁって」
善子「どういう事?」
梨子「お子様」シラッ
善子「なっ! どういう意味よ!」
梨子「そのままの意味だよー」ジトー
善子「何それ、意味わかんない!」プンスコ!
―――
――
#5 ヴェノム
――映画館
梨子「今日は何を見るか決めているの?」
善子「モチロン! ずっと見たかったのがあるのよ!」
梨子「へぇ、なになに?」
善子「これよ! 『ヴェノム』!」
梨子「んー。どこかで見たことがあるような……」
善子「流石ねリリー。ヴェノムはマーヴルのアメコミが原作で、元はスパイダーマンのヴィランとして登場したキャラよ。一度『スパイダーマン3』で映画には出ていたわね」
梨子「ああ、そういえばいた気が……。敵だよね?」
善子「そうよ。けど、あれとは全くの別物だと思って大丈夫よ」
梨子「そうなんだ」
善子「原作のヴェノムはどちらかと言えば純粋な悪というより、ダークヒーローとして描かれているの。スパイダーマンに恨みはあるけどそれ以外の一般人に危害を加えたりしないし、目的が”弱者の庇護”だったりね。クククッ、まさにこのヨハネに相応しいキャラね!」
梨子「へー。そういうキャラ好きかも」
善子「実のところ、映画化の企画自体は10年ほど前からあったのだけれど、色々頓挫した結果お流れになっていたのよ……。だから今回の映画化は本当に嬉しいわ!」
梨子「よっちゃん、本当に好きなんだね」クスクス
善子「ええ。荒々しい戦い方がとってもカッコいいのよ!」
梨子「そうなんだ! じゃあ楽しみだね」
善子「さぁ行くわよ! ウィーアーヴェノム!」ビシッ
――上映後、カフェ
善子「かっこよかったわね!」
梨子「アクションがよかったね。ストーリーは王道でわかりやすいし、面白かった」
善子「ヴェノムならではのトリッキーな動きが最高よね。CGも綺麗でリアルだったわ」
梨子「見た目が禍々しいし、普通に人間食べるし、本当にダークヒーローって感じ」
善子「そうね。デッドプールに近い感じかしら。あれほどぶっ飛んではいないけど……」
梨子「言われてみれば、雰囲気が似てるかも。こっちはそんなにグロくはなかったけど、全体的にコミカルでギャグっぽいシーンが多めだったし」
善子「そうそう。何かヴェノムが妙に人懐っこくて可愛かったわよね」
梨子「うんうん。寄生虫扱いされて怒ったりとか、見た目に反して可愛すぎ」
善子「とにかく”We are Venom”が聞けて満足よ」
梨子「でもエンディングのヴェノム連呼は笑っちゃった」
善子「ヴェノームヴェノンヴェノンヴェノーン」
梨子「でもカッコいい曲なのが凄いよね。流石エミネム」
善子「はー、ヨハネもシンビオートに寄生されたいわ」
梨子「何かそれちょっとエッチっぽい」
梨子「ていうか適合しなかったら死んじゃうよ?」
善子「ヨハネなら適合してみせるわ! 堕天使シンビオートのヨハネ、誕生よ!」
梨子「ヴェノムは高音が苦手みたいだったけど、ピアノの高音とかは大丈夫なのかなぁ」
善子「う……、多分無理ね。隣の家のギターの音にも怒ってたし」
梨子「アイドル活動も出来なくなっちゃうね……」
善子「リリーのピアノが聞けなくなるのも困るわねぇ」
梨子「でしょ? よっちゃんは今のままが一番だよ?」
善子「う……。何よそれ……」カァァ
梨子「そのままの意味だよ」ニコッ
善子「何それ、意味わかんない」フイッ
―――
――
#6 ボヘミアン・ラプソディー
梨子「ね、よっちゃん、『ボヘミアン・ラプソディー』が公開されたわけですけれども」
善子「クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの映画ね」
梨子「よっちゃんは次の日曜日、いかが過ごすご予定でしょうか」
善子「ええと……、映画に誘う予定だったんだけど」
梨子「誰を?」
善子「リリーを」
梨子「私を?」
善子「うん」
梨子「そ、そっかぁ!」ニヘラ
善子「その様子だと、リリーの方も同じ気持ちだったみたいね」フフ
梨子「えへへ。で、ボヘミアン・ラプソディーが見たいんだけど……いいかな?」
梨子「クイーンはあまり詳しくないんだけど。一応音楽をやっている身として、見ておきたいなーって」
善子「モチロンよ。いつもリリーには付き合ってもらっているのだし」
梨子「ありがとう、よっちゃん!」
善子「では日曜日ね」
梨子「うん!」
――日曜日、上映後
梨子「……」グスッ
善子「ううっ……」ウルウル
梨子「な、泣いちゃった」グスグス
善子「こんなの泣くわよぉ……」ズズーッ
梨子「想像していた以上に良かったぁ……」
善子「クイーンなんて一部の曲しか知らなかったけれど、それでもこんなに感動できちゃうものなのね……」
――カフェ
梨子「知ってる曲が流れると、思わず歌いたくなっちゃうよね」
善子「ズッズッズッ」
梨子「ンナザワンバイツァダスッ」
善子「あとエンディングのドンストップナウ」
梨子「ドンストッピッドンストッピッドンストッピッ」
善子「ヘイヘイヘーイ」
梨子「ドンストッピッドンストッピッ」
善子「ウッウッウーッ」
周りの客「クスクス」「ナニアレー」
善子「しまった……」カァァ
梨子「自分達の世界にはいっちゃってたね……」カァァ
善子「こういう映画を見た後だとずっとテンション引きずっちゃうわよねー……」
梨子「後でカラオケでも行く?」
善子「良いわね! モチロンクイーン縛りで」
梨子「そういえば、フレディは同性愛者だったんだね」
善子「なかなか、複雑な感じよね。最初は普通に女の子が好きだったみたいだけど」
梨子「後々自分のセクシュアリティに気付く事も結構あるみたいだからね」
善子「へぇ……、じゃあもしかしたらヨハネやリリーが同性愛に目覚める事もあるのかしら」
梨子「え? いや、私はもう……って!」ハッ
梨子「なんでもないなんでもない」アセアセ
善子「?」
梨子「……よっちゃんはもし、自分が女の子しか愛せないってなったらどうする?」
善子「え? うーん……」
善子「リリーに告白する?」
梨子「え!?」ビクッ
善子「一番仲良いの、リリーだし……」
梨子「え、えぇっ!? 花丸ちゃんやルビィちゃんはっ……、ていうか、そういう事じゃあなくて、ああ、もう」
梨子「もう!」
善子「そ、そんなに嫌だった……?」オロオロ
梨子「そういう事でもなくて!」
善子「も、もしヨハネが同性愛者だったらって話よ?」アタフタ
梨子「わ、わかってる、わかってるよぅ」
善子「今はそんな気全然無いんだからね?」アタフタ
梨子「知ってた」ズーン
―――
――
善子「んー、今年はこれで映画も見納めかしら」
梨子「あ、私後一作見たいのあるんだけど……」
善子「何?」
梨子「ヒントはホラーです。日本の」
善子「ほ、ホラー? この時期に?」
梨子「Jホラーといえば夏が定番だから、珍しいよね」
梨子「でもどうしても、これだけは見ておきたいの!」
善子「わ、わかったわ。リリーが見たいなら、付き合うわよ」
梨子「やった!」
#7 来る
――映画館
梨子「これだよ。『来る』」
善子「ホラーね……」
梨子「うん。多分直球にホラーだと思うよ」
梨子「監督は『下妻物語』とか『告白』の中島哲也監督! この人、本当に上手い画を撮る人だから、凄く期待してるの」
善子「下妻物語は面白いわよね」
梨子「うん。私も大好きな映画だよ。告白も暗いし重いけど、面白かったなぁ」
善子「期待が出来そうね」
梨子「ホラーを撮るのは初めてみたいだから、恐怖をどう表現してくるのかも楽しみ」
善子「じゃあ早速行きましょう。チケット買ってくるわね」
――上映後
善子「ま、まぁまぁ怖かったわね。しかしこの堕天使ヨハネの前ではあのような怪異、恐れるまでもありません」ガクガク
梨子(よっちゃんがずっと腕を掴んできて集中できなかった……)
善子「もし私の元にやってきても堕天使の闇能力で追い払ってやるわ」ブルブル
梨子「あはは……。でも、本当に怖かったよね。しっかりと嫌な感じの画を見せつけてくると言うか」
善子「気持ち悪い映像が多かったわよねぇ」
梨子「オープニングの気持ち悪い感じは秀逸だよね。あと、やっぱりあの徐霊シーンかな?」
善子「確かに。あんなに大掛かりな徐霊シーンは初めて見たわ」
梨子「私も。ホラー好きな人はあれだけの為にも見る価値があると思う」
―――
――
善子「あーっ! し、しまった!」ハッ
梨子「どうしたの?」
善子「今日、家に誰もいないんだったわ……」アワワワ
梨子「あー……。怖いの?」
善子「こ、怖くないわよ! ただ今日は魔力が弱まっているから結界が維持できるか心配で……」アセアセ
梨子「ふふっ。良かったら、うちに泊まりに来る?」
善子「良いの!?」パァァ
梨子「うん。お母さんも良いって言うと思う」
善子「クックックッ! ならば今日はこの堕天使ヨハネが、リリーを守護してあげるわ!」ギラン
梨子「はいはい。お風呂も一緒に入る?」
善子「それは流石に! ……あ、いや……お願いします」ペコリ
梨子(計画通り)ニヤリ
――梨子の部屋
善子「今年は映画をいっぱい見た気がするわねぇ」
梨子「だね。私も今年は特にたくさん見たかなー」
善子「リリーのおかげかも」
梨子「えっ?」
善子「ほら、映画って――1人で見ても良いのかもしれないけれど――こうして一緒に見てくれる人がいて、終わった後にお互いに思ったことを言い合うのって凄く楽しいじゃない?」
善子「だから、リリーが隣で一緒に見てくれたおかげよ。私が映画を見るのが好きになったのは」
梨子「よっちゃん……」
善子「ねぇ、リリー、来年も一緒にいてくれる?」
梨子「そんなの、当然だよ。私もよっちゃんと映画を見るの、大好きだもん!」
善子「ふふっ! じゃあ、来年もよろしくおねがいするわ、リリー」
梨子「こちらこそ。よろしくおねがいします、よっちゃん」
梨子「よっちゃんは来年、楽しみにしている映画とかある?」
善子「うーん、そうね。ギアスの新作も見たいし」
梨子「マスカレードホテルも面白そうだよね」
善子「ゴールデンスランバーの韓国リメイクもやるのよね。最近の韓国映画は面白いし、これも気になるわ」
梨子「サスペリアのリメイクも見たいな」
善子「でも、やっぱり一番見たいのは」
梨子「うん。あれだよね」
善子&梨子「劇場版『ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow』!!」
善子「スクールアイドル9人の活躍を描いた青春アイドルアニメの劇場版!」
梨子「アニメのその後の話なんだよね。楽しみだね」
善子「1月4日公開予定よ!」
梨子「これは絶対見逃すわけにはいかないね!」
善子「リリー、一緒に見に行くわよ!」
梨子「うん!」
オワリ
ほとんど今年見た映画の感想をキャラに代弁させただけになってしまいました。
映画のチョイスに女子高生感0だね!
全体的に読みやすかった
ボヘミアン・ラプソディは面白かったから見てない人はオススメだわ
善子ちゃん、ギアスとか好きそうwww