ことりぷらす

とある日の放課後、3年生の教室…

ザァアアア…

果南「…」

果南「また雨か…」ﾊｧ

鞠莉「あめあめふれふれ かあさんが～♪」ｶﾞﾗｯ

鞠莉「じゃのめでおむかい うれしいな～♪」ﾌﾌﾌﾝ

果南「鞠莉、雨なのにご機嫌だね？」

鞠莉「イェース！マリーはレイニーでもサニーでもシャイニーなのデース☆」

果南「あはは、なにそれ。で…どう？練習はできそう？」

鞠莉「体育館は運動部が使ってるし、空き教室も無いから練習は中止だって」

果南「そっか…これで今週は毎日、雨で練習が無くなっちゃったね」

鞠莉「そういう時もあるわよ！」

鞠莉「…そういえば、さっきの歌に出てくる“じゃのめ”ってなんなのかな？」

果南「蛇の目。ヘビの目みたいな模様がついた和傘のことだよ」

鞠莉「ワオ！果南ってばハクシキ～！」

鞠莉「じゃあ練習も無いし、そろそろ帰ろっか？」

果南「…ごめん鞠莉、今日は先に帰っててもらえる？」

鞠莉「いいケド…どうかした？」

果南「ん？いや、別に…」

果南「ちょっと考え事…かな？」

鞠莉「考え事って…何かあったの？」

果南「心配しないで大丈夫。私も少ししたらすぐ帰るからさ」

鞠莉「そう…？じゃあ私は帰るけど…」

果南「うん、また来週ね」

ザァアアア…

果南「…」

果南（なんだろ…私の心もこの雨みたいに晴れてくれない）

果南（昔からそうだ。何か悩みがあるとき、決まって雨が降り続ける…）

果南（鞠莉とも仲直りして…Aqoursに入って…毎日が楽しいはずなのに…）

果南「どうして…なんだろ」ﾊｧ

ルビィ「あれ…果南さん？」ﾁﾗｯ

果南「あ、ルビィちゃん」

果南「今日は練習中止だよ。まだ帰ってなかったの？」

ルビィ「う、うん。先生にプリント出して職員室から戻ってきて…」

ルビィ「そしたら教室から果南さんの声が聞こえたから」

果南「そっか…」

果南「…」

果南「ルビィちゃん、せっかくだし教室入りなよ。たまには話でもどうかな？」

ルビィ「え…？る、ルビィとですか？」

果南「うん。あ、用事があるなら大丈夫だけど…」

ルビィ「う、ううん大丈夫です！いまそっちに行きますから！」

ルビィ「し、失礼します」ｽｯ

果南「あはは、そんなかしこまらなくてもいいのに」

ルビィ「で、ですよね！ごめんなさい！」

果南「…」

ルビィ「…」

果南「…」

ルビィ「…」

果南（話でも、って言ったけど…）

果南（困ったな…どんな話をすればいいか考えてなかったよ…）

ルビィ「…」ｿﾜｿﾜ

果南「えと…そうだ、最近のダイヤはどう？」

ルビィ「え…お、お姉ちゃんですか？」

果南「うん、スクールアイドル再開したから色々と変わったかな…って」

果南「少し前まではμ’sのことも嫌いになってたでしょ？」

ルビィ「あ、はい…でも今は前みたいにμ’sやスクールアイドルのことも好きになったみたいです」

果南「そっか、それは良かったよ」ｸｽ

ルビィ「そ、そんな感じです…」

果南「そっかそっか…」

ルビィ「…」

果南「…」

ルビィ「…」ｿﾜｿﾜ

果南「…ルビィちゃん」

ルビィ「は、はいっ！」ﾋﾞｸｯ

果南「…もしかして私のこと苦手？」

ルビィ「ピギャ！？」ﾄﾞｷｯ

果南「小さいとき遊びに行っても、居るのはダイヤだけでルビィちゃんの姿は見たことないし」

果南「もしかして…避けられてた？」

ルビィ「う、うゅ…そ、そんなことは…」ｵﾛｵﾛ

ルビィ「…」

ルビィ「あ、ありました…すみません…」

果南「あはは、別に謝らなくても大丈夫だよ」

ルビィ「ルビィ昔から人見知りで…お姉ちゃんの友達が遊びにくるとどうしても緊張しちゃって…」

ルビィ「それで自分の部屋に隠れてたの…ごめんなさい」

果南「いや分かるよ、兄や姉の友達が遊びに来ると少し戸惑っちゃうもんだよね？」

果南「今もそう…あれだけ頑なにスクールアイドルを拒んでた私だもん」

果南「Aqoursに入って来られたら困るよね」ｱﾊﾊ…

ルビィ「そ、そんなこと！それに元々Aqoursは果南さんたちが作ったし…」

果南「…」

果南「いや、そうなんだよ…やっぱり私がスクールアイドルをやる資格なんてないんだ」

ルビィ「えっ…？」

果南「私がちゃんと話をしなかったせいで、鞠莉を傷つけていた」

果南「いちばん近い大事な友達を泣かせるような人間が…大勢のファンに幸せを届けるなんて出来ないよ」

果南「それに可愛い服を着て踊るなんて…やっぱり私のガラじゃないしね…」ｱﾊﾊ…

ルビィ「…」

果南「…あはは、なんかゴメン。湿っぽくなっちゃって」

果南「そろそろ帰ろうか？」

ルビィ「う、うん…」

帰り道…

果南「…」ﾃｸﾃｸ

ルビィ「…」ﾃｸﾃｸ

果南「…」ﾁﾗｯ

果南（…まいったな、また会話がないよ）

果南（Aqoursをやるべきじゃなかったなんて言ったら…そりゃ困るよね…）

テクテク…

果南「…ん？」ﾁﾗｯ

ワイワイ…

子供A「わー！雨だ雨だーー！」ﾜｲﾜｲ

子供B「ねー！たくさん濡れた方が負けゲームやろー！」ﾜｲﾜｲ

子供A・B「「あめあめふれふれ かあさんが～♪」」ﾊﾞｼｬﾊﾞｼｬ

お母さん「こらー走ったら転ぶわよー！」ｸｽ

ワイワイ…

果南「…」

ルビィ「…あの子たち、雨なのに楽しそうだね！」

果南「うん、子供はなんでも楽しいのかもね」

果南「…」

――あめあめふれふれ かあさんが…

――――
――
―

果南（子供）『あめあめふれふれ かあさんが～♪』

果南『じゃのめでおむかい うれしいな～♪』

果南『ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン♪』

果南ママ『ふふ、果南はお歌がとっても上手ね』

果南『うん！果南うたうの大好き！』

果南『果南ね！みんなを笑顔にするアイドルになる！』

果南ママ『あ、じゃあママが笑顔になった第1号かしらね？』ｸｽ

果南『えへへ！ねーお母さん！一緒に歌おー！』

果南ママ『ええ、いいわよ』

果南・果南ママ『あめあめふれふれ かあさんが～♪』

果南・果南ママ『じゃのめでおむかい うれしいな～♪』

――ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン…

―
――
――――

果南「…ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン」ﾎﾞｿ

ルビィ「…果南さん？」

果南「え？あ…あの子たちの歌ってる歌が懐かしくてつい…」

ルビィ「…」

ルビィ「ねえ果南さん、それ2番わかる？」

果南「え？えっと…どうだったかな？」

ルビィ「…かけましょかばんを かあさんの～♪」

果南「…あ、あー！」ﾊｯ

果南「あとからゆこゆこ かねがなる～♪」

果南・ルビィ「「ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン♪」」

ルビィ「あらあらあのこは ずぶぬれだ～♪」

果南「やなぎのねかたで～…」

果南「ないて…いる…」

果南「…」

ルビィ「…果南さん？」

果南「…ダメだよ、いつまでも泣いてたら」

果南「みんなを笑顔にするには…自分が笑顔にならないとダメなんだ…」

ルビィ「…」

果南「私は…」

果南「友達も…ファンも…自分も…！みんなを笑顔にしたい…！」

ルビィ「…」

ルビィ「…じゃあ一緒にスクールアイドルを楽しまないとね！」ｷﾞｭｯ

果南「ルビィ…ちゃん…！」

果南「…」

果南「…うん！」ｷﾞｭｯ

ルビィ「…ハックシュン！」

果南「あはは、ちょっと冷えちゃったみたいだね」

ルビィ「それにかなり濡れちゃったね」

果南「…」

果南「ねえ、明日休みだし…よかったらウチに泊まってく？」

果南「その…色々ルビィちゃんと話してみたいしさ」

ルビィ「…いいの？じゃあ…おじゃましよっかな？」

果南「うん！じゃあウチに電話いれておくね」

果南「母さんがあったかいご飯作って待ってててくれるよ！」

ルビィ「やったー！楽しみだなぁ！」

アハハハ…

――――
――
―

数日後、部室…

ザァアアア…

果南「ねえルビィ？ここのステップってどんな感じだと上手くいくかな？」

ルビィ「この果南ちゃんのパートはリズムが難しいからね～」

果南「ちょっと2人で練習してみよっか！」

ルビィ「うん♪」

ワイワイ…

千歌「最近、果南ちゃんすっごく明るくなったよね」

ダイヤ「ええ、元気が無かったので心配してましたが良かったですわ」

鞠莉「むぅ…？なんだかルビィに良いとこ取られちゃったみたいだわ！」

鞠莉「でも果南が笑顔になったから結果オーライデース♪」

鞠莉「こらー！2人でイチャイチャしてないでマリーさんも混ぜなサーイ！」ﾊﾞｯ

果南「わぁ！？どうしたのさ急に！」

ダイヤ「それにしても最近はずっと雨ですわね」

千歌「ねー、やんなっちゃうよ！早く外で練習したいのにー！」ﾌﾞｰ

果南「あはは、でも雨もそんなに悪くないもんだよ？」

ルビィ「なんだか落ち着くときもあるよね」

千歌「えー？そういうものかなあ？」

ポツ…ポツ…

ダイヤ「…おや？」

ダイヤ「どうやら雨が止んだようですわね」

千歌「やった！やっと外で練習できるよー！」ﾜｰｲ

千歌「みんな！先に行ってるね！」ｶﾞﾁｬ

ダイヤ「こら千歌さん！走ったら転びますわよー！」

鞠莉「クス、じゃあ私たちも行こっか！」

ルビィ「うん！…あっ！」

ルビィ「みんな、外見て！」

果南「あ…」

果南「虹だ……！」

キラキラ…

果南（これから先…また私の止まない雨は降るかもしれない…）

果南（でも今の私なら…きっとその雨も楽しんでいけるだろう…）

果南（その先に…もっと楽しい晴れ空が待っているはずだから―――）

おわり